所要で明石まで出かけた。
いつもは車だが、余る時間も楽しめるかと電車で移動してみた。
そう思っただけで明石が旅行の目的地のように思え、小旅行の気分である。
JR三宮の改札口をくぐる。
もう久しぶりの電車の香りが漂う。
子供の頃から、エアコンの効いた特急電車の匂いがとても好きである。
冬の寒い朝、ヒーターあたりから漂うあの香りもなかなかのものであるが。
最近そんな事は考える時間がなかったな、と走り始めた快速電車の窓の外を見ながら思う。
いや本当は時間はあったのだろうが、気持ちの余裕がなかったのかもしれない。
だからこうして無為に見える今も、きっと自分らしさを取り戻す貴重な時なのだろう。
左手に林立するオフィスビルにさえぎられて神戸港は見えない。
右手は緑があふれるばかりの山並みが続く。
車輪をきしませながら、快速電車は神戸駅を出発した。
夏の太陽はもうジリジリと焼け付くばかりの熱を伝えている。
コンクリートのビルと高速道路の橋脚はそれを反射すらしない。
涼しい車内に居てもじっとり汗がにじむような景色である。
唐突に海が見えた。
青い海。広い海。静かな海。
今日の私にはただただ優しい海。
このままあの海に飛び込んでしまおうか、そんな衝動に駆られ須磨駅で電車を下りた。
ホームから見た須磨は、車窓とは打って変わってたくさんの家族連れやカップルの嬌声にあふれていた。
浮き輪やカラフルな水着の派手な色は、まるでコンクリートに染み入る日差しのように見えた。
一刻も早く立ち去らなきゃ、タイミングよく着いた普通電車にあわてて飛び乗る。
ここからはもう目的地も近いから、席には座らない。
朝の通勤時間はとうに過ぎ、車内は案外静かである。
ふと反対側の扉の横でタブレット端末を使って仕事に励む男性に気付く。
あの人もきっと電車の匂いの違いには気付かないのだろうな。
そんな事を思いながら車掌の明石の声を待った。
いつもは車だが、余る時間も楽しめるかと電車で移動してみた。
そう思っただけで明石が旅行の目的地のように思え、小旅行の気分である。
JR三宮の改札口をくぐる。
もう久しぶりの電車の香りが漂う。
子供の頃から、エアコンの効いた特急電車の匂いがとても好きである。
冬の寒い朝、ヒーターあたりから漂うあの香りもなかなかのものであるが。
最近そんな事は考える時間がなかったな、と走り始めた快速電車の窓の外を見ながら思う。
いや本当は時間はあったのだろうが、気持ちの余裕がなかったのかもしれない。
だからこうして無為に見える今も、きっと自分らしさを取り戻す貴重な時なのだろう。
左手に林立するオフィスビルにさえぎられて神戸港は見えない。
右手は緑があふれるばかりの山並みが続く。
車輪をきしませながら、快速電車は神戸駅を出発した。
夏の太陽はもうジリジリと焼け付くばかりの熱を伝えている。
コンクリートのビルと高速道路の橋脚はそれを反射すらしない。
涼しい車内に居てもじっとり汗がにじむような景色である。
唐突に海が見えた。
青い海。広い海。静かな海。
今日の私にはただただ優しい海。
このままあの海に飛び込んでしまおうか、そんな衝動に駆られ須磨駅で電車を下りた。
ホームから見た須磨は、車窓とは打って変わってたくさんの家族連れやカップルの嬌声にあふれていた。
浮き輪やカラフルな水着の派手な色は、まるでコンクリートに染み入る日差しのように見えた。
一刻も早く立ち去らなきゃ、タイミングよく着いた普通電車にあわてて飛び乗る。
ここからはもう目的地も近いから、席には座らない。
朝の通勤時間はとうに過ぎ、車内は案外静かである。
ふと反対側の扉の横でタブレット端末を使って仕事に励む男性に気付く。
あの人もきっと電車の匂いの違いには気付かないのだろうな。
そんな事を思いながら車掌の明石の声を待った。